ERIKO YANO

We attack the house of FURUYA FAMILY/ふるやんちを毎晩スプーンで叩く

Mixed media
2013

「ふるやんち」はいつもの帰り道にある狭い空き地に建った、平凡な小さな一軒屋のことである。 

ある日、その狭い空き地に立っていた看板は「売地」から「成約済み」になった。あくる小雨の日には、神主さんと若い男女が立っていた。そしてあっという間に都会では珍しくない、縦に縦に長い家になり、ついには「古屋」という表札がかかった。 

私はその間、ただただその横を通り続けただった。断っておくと、私は決して、狭すぎる土地に無理矢理ねじ込まれる様に建っているその家をうらやましいと思っていたわけではない。むしろ、古屋さんには悪いが、こんな狭い家に高いローンを組んで、これからの人生をこの場所で過ごすことに決めるなんて信じられないとすら思った。それでも、25歳という、(当時の感覚で言えば)中途半端な年齢であった私は、日に日に生活色で彩られていくふるやんちの横を通る度に、漠然と「何か」を見る様になっていた。 

私の一番古いともだちであるワニ子は、そんな私をみて、こっそりとふるやんちを壊す計画を打ち立てた。それは、毎晩スプーンを持って仲間と共に行進し、ふるやんちを叩き壊すというものだった。しかしふるやんちは壊れるどころか、どんどん完成していった。 

ただのスプーンで叩いているのだから、当然である。それでも、ワニ子たちは真剣だ。毎晩毎晩行進し、叩き続けた。別に頼んでもいないのだが、私のために。